毎週水曜夕方6時〜配信中のポッドキャスト番組ウツワをツクルのコーナー「没頭さん、こんにちは。」では、現在没頭中のゲストさんをお呼びして、没頭しているコト・モノについての魅力や抱えている悩みなどを質問し、没頭さんの頭の中を覗いていきます。
今回の没頭さんは脚本家の卵、よっしーくんをお招きしました。
19歳の彼が没頭していることや、現在抱える悩みなどを教えていただきました。
今回の登場人物
ミチガミ
ウツワニウム 代表
札幌を拠点にクリエイティブプロダクション<ウツワニウム>を設立。
会社経営と並行して、短編映画を中心とした映像作家としても精力的に活動している。
ヤマザキ
北海道札幌市の俳優・監督。ウツワツクルではメンターを務める。劇団フルーツバスケットに14年間スタッフとして関わり、映画「糸」出演、映画「運命屋」では制作・キャスティングを担当。
カッシー
ウツワニウム スタッフ
ウツワツクルのメンター。WEBディレクター・コーダー・SNSマーケティングなどを担当。
よっしー
小学六年生から高校三年生まで劇団フルーツバスケットに在籍。小学生時代に読書に没頭し始める。中学で小説の執筆を始め、現在は脚本づくりに没頭中。
脚本づくりに没頭するよっしーくん
ミチガミ
さて、今日はゲストをお迎えしています。よっしーくんです、よろしくお願いします!
よっしー
よっしーです、よろしくお願いします!今、自分は19歳で、18歳まで札幌のミュージカル劇団の劇団フルーツバスケットに所属していました。これまでずっと役者として活動していましたが、最近は脚本を書くことにも挑戦しています。
ミチガミ
よっしーくんはもともと役者として活動していたけども、今は脚本づくりに没頭しているんですね。
よっしー
そうなんです。自分がものを書き始めたのは中学1年生ぐらいで、そのころはただ書くことが目的で、何か1つのお話を最後まで書いたことがありませんでした。
昨年の冬ごろから二次創作に挑戦して、既存のゲームのキャラクターに別の設定を加え、どんな物語になるかを考え始めました。この二次創作が、自分の一次創作にも繋がっていると思います。自分が何を書きたいのか、そのヒントが二次創作から来ているのかもしれません。二次創作に没頭することが、最近では自分が作る脚本の土台になっていると気づきました。一見すると無駄に思える二次創作ですが、実は遠回りに見えて一番の近道なのかもしれません。
ミチガミ
なるほど。お話を作ることに向き合って没頭していると。ちなみにその脚本っていうのは、どういう脚本ですか?
よっしー
基本的には映画の脚本を書いています。自分が最初に書いたのは高校生が主人公の話なんですけど、映画づくりを想定して書きました。高校生2人のカップルと、ろくでもない大人がいっぱいいて…。結局映画化には至りませんでしたが、いつかは映画をつくりたいですね。
ミチガミ
脚本を書いていて、どういったところがおもしろいと感じますか?
よっしー
一番おもしろいのは、自分でも書き始める前は想像できないようなことが次々と頭の中で膨らんでいく瞬間です。書き始めると、それが自然に起こるような感覚があります。登場人物が本当に生きているように、自分で動いてくれるんです。
僕の脚本を分析すれば「こういう思考回路でキャラを動かしてるんでしょ?」と言われるかもしれませんが、感覚としてはそうじゃないんです。登場人物がその世界で本当に生きていて、予定と違う行動をしたり、オチがガラッと変わったり、生き残るはずの人が死んでしまったりします。
脚本の書き方としてこれが正しいかはわからないですが、自分がつくった世界で、登場人物が生きていて、私の頭から独立したような感覚になれることがおもしろいです。
カッシー
ジョジョの奇妙な冒険シリーズの作者、荒木先生も同じようなことをおっしゃってました!キャラの性格とかが決まってくると、自動的に物語が進み出すって。
ミチガミ
荒木先生と並んで(笑)
カッシー
ミチガミさんが脚本を書く時はどうなんですか?
ミチガミ
そういう状態って、良い状態ですよね。もちろん、いつもそうなるわけじゃないけど、そこまで掘り下げられてると自然と話が進んでいくし、必然的に執筆が進むというか。設定や段取りじゃなくて、「こうならざるを得なかったんだよな」っていう論理で脚本が書ける状態になると、本当にスイスイ進むことはあります。
まあ、いろんなアプローチ・書き方があるから、キャラが勝手に動き出すスタイルの人もいると思います。
カッシー
脚本というと、映画や演技などのセリフ・動作を書いたものだと思います。本が好きでお話を書くようになったということでしたが、小説ではなく、脚本を書くようになったきっかけは何だったんでしょうか。
ミチガミ
そもそもお芝居を始めたっていうのもね。
よっしー
お芝居を始めたのは、小学校5年生のころです。物語りに興味があるっていうのを母が感じ取ったらしく、劇団フルーツバスケットを見つけて「とりあえず見学に行ってきなさい」って言われました。でも、正直見学した時は、入団するつもりはなかったんです。
小学校の時に、水泳、そろばん、英語とか、いろんな習い事をやっていたんですけど、どれも3年以上続かなくて。自分の中で中途半端だな〜という思いがあったので、入団を決めました。
ただ、「こういう役者さんになりたくて入りました!」とか「主役をやりたくて入りました!」というわけではありませんでした。
ミチガミ
スポットライトを浴びることに対して、「嬉しい!」って気持ちは別に無かったってこと?
よっしー
スポットライトを浴びることやお芝居に対して、とくに特別な感情はありませんでした。ですが、高校2年生のころにいただいた役がきっかけで、お芝居について真剣に考えるようになりました。
簡単じゃないのが面白い。
ヤマザキ
二面性のある役でしたよね。最初は良い人で、最後は黒幕になる役。
よっしー
そうですね。そのお芝居の上映が終わった時に「もったいなかったな。」と思いました。せっかくいい役だったのに、なんとなくお芝居をこなしていて、全然役のことを考えて演じてなかったな。っていう後悔がありました。
その後に、ヤマザキさんが開いていた、映像演技クラスというお芝居の練習会に1年間ほど参加しました。自分は他の劇団のオーディションを受けたことがなくて、劇団フルーツバスケットで用意される台本や脚本しか知らなかったんですよね。
その状態で、ヤマザキさんの映像演技クラスに入ったので、いろいろな台本や脚本を読ませていただいた時に、すごい面白いと思った脚本が1つあって。きっとその脚本は小説にしてもおもしろいものになったと思うんですけど。
脚本はそれだけでは完結せず、監督や役者がいて初めて成り立つもので、簡単にはいかない。その難しさがおもしろいなって思いました。
ミチガミ
脚本は、それだけで完結するものではなく、家の設計図みたいなもので、設計図だけあっても家が建つわけじゃない。監督や役者さんたちがその設計図を元に、実際に家を建てるように、映画や舞台をつくり上げる。脚本はそれらを作るための設計図のようなもので、設計図通りに作るのは簡単じゃないから、その難しさもおもしろいと思ったってこと?
よっしー
そうですね。役者ありきみたいなところが大きいと感じています。なぜ小説ではなく、脚本を書くのかと聞かれると、ヤマザキさんのそのクラスにすごい影響を受けてると思います。
脚本づくりは、僕にとっての逃げ道。
ミチガミ
話を聞いていて、よっしーくんは子どものころから没頭するものが常にある人生だったんだなって感じました。没頭するものがある人生はどうですか?
よっしー
例えば、自分がこの脚本とか、ものを書くことに出会ってなかったら、もしかしたら、引きこもりみたいになってる可能性もあるかなって。(笑) 自分にとっては、逃げ道というか…。
ミチガミ
わかる。逃げられる場所だよね。
よっしー
もし、死ぬまでに書きたいと思うような目標がなければ、自分はすぐにやる気を失ってしまう人間なのかもしれません。ある意味、ちょっと救われてる部分はあるのかな。
ミチガミ
逃げ道って言葉だけ取ると、すごいネガティブな感じもするけど、自分で自分を維持できるみたいな感じだよね、没頭できるものって。漠然としてて、明確に見えてはいないけど、それと向き合っていくから先があるというか。
よっしー
1カ月くらい前に、書こう。って思えるテーマがあったんです。もうこれが、最後の作品になっても良いから、これだけは書こうって思えるものがあって。「やるぞ!」って書いたんですけど、「これ、ゴールじゃないな」っていうのが見えてきて…。
ゴールがしっかり見えちゃうと、違ってきちゃうのかなって…。もちろん、その短期的な目標みたいなのは大事だと思うんですけど、さっきミチガミさんが言ったように、漠然とした「これをしたい」みたいなものの方が大事なのかなって、最近思うようになりました。
ミチガミ
ある意味、漠然としている方が、根拠のない自信を持てるように思います。
ヤマザキ
親御さんも、よっしーが脚本を書くことに興味を持つとは思っていなかったかもしれないね。でも、「この子は物語の世界に興味がある」って、見抜いていたんだろうな。
その物語の世界に触れる一つの手段として、劇団フルーツバスケットを見つけて、「見学に行きなさい」って言ったのかもしれない。よっしー自身は、歌やダンスが少し苦手な子だったけど(笑)
ミチガミ
なんか、そんな感じがします。
ヤマザキとの関係。
ヤマザキ
その後、今こうやって一緒に、脚本やる時にアドバイスさせてもらう立場になると、やっぱり脚本を書く以外の悩みっていっぱいあって…。いつまでに納品しなくてはいけないとか。よっしーはすでに舞台を1本やったり、短編映画の脚本・演出したりと活動していて、色々めんどくさいことがあるわけですよ…。
いつまでにこれを大人に言わなきゃいけないとか、これをしないと物事が進まないとか、これをしないとみんなが困ることって、脚本を書くこととは全く別のめんどくさい作業で、普通だったらまだ経験もないからわかんなくなって逃げ出したくなったりすると思うんだけど…。
それでもやっぱり、生まれた物語のことが好きで、物語を形にするっていうことを面白いと思ってるから、そのめんどくさくて、嫌なことに向き合わなきゃいけなくて…。
その度、「これやるの嫌でしょ?」って言うと、「はい。」って返ってきて、でも、それがすごく良いなと思って。生きてく上で必要なめんどくさいことが、好きなことがあるとちょっと頑張れるみたいな。そういうのは、感じてた。
よっしー
そうなんですよ。最近も脚本を1つ頼まれた際に、ちょっとしたトラブルがいくつかありまして。これどうしよっかな。って時にヤマザキさんからLINEが…(笑)
ミチガミ
ちょうど来るんだ。 すげぇな…(笑)
よっしー
ちゃんと向き合わないとっていうのを…。毎回、感じます。ヤマザキさんには本当にお世話になってます。
没頭を仕事にする?
ミチガミ
あえて意地悪なこと言うと、よっしーくんはもう大人になりかけてるし、その中で、「脚本家を目指すのかとか?」映画なら「映画監督になるのか?」とか、「もっとコンクールとかにいっぱい出していくのか?」みたいなことを言われるだろうし、自分の中でもそういう、欲みたいなのも多分あるのかもしれない。
そういった中での、ものづくりに没頭していく。今、これからやっていくものづくりっていうのを、よっしーくんが今自分の中でどんなふうに理解しているのかをちょっと聞いてみたいな。
よっしー
コンクールで言うと、手稲山の映画祭の原案募集にチャレンジしたいと思っています。これは、短期的な目標ではありますが。長期的に見て、「お前は何になりたいんだ。」って言われると…。
ミチガミ
映画やものづくりの世界って職業とかっていうことと結びつけられがちだよね。そのコンクールに出そうと思ってる理由みたいなものがあれば知りたいな。
単純に自分が自分を維持するための没頭だったら、別に無理にコンクール出す必要って無いじゃないですか?だけど、やっぱ出そうと思う理由。
よっしー
明確な理由があって、ヤマモトヒロヤくんという同い年の男の子がいるんですが、彼が手稲山の映画祭に去年挑戦していて、勝手にライバル視しています(笑)
一同
おお!(笑)
ミチガミ
要は、嫉妬ってやつですね?(笑)
よっしー
そうですね(笑)
ヤマザキ
ありますよね〜。モチベーションとして、大事ですから。
よっしー
自分の中では、彼に差をつけられていると思っています。追いつきたいというわけではないですが、「真似できるものは真似してみよう!」という気持ちで、挑戦してみようとかなと。
ミチガミ
将来は何か考えてますか?
よっしー
全然考えてないです…(笑)
ミチガミ
「仕事はどうするの?」と聞かれたりしませんか?
よっしー
もう何度も聞かれていて…。今はちょっとしたアルバイトをいくつかしています。この仕事を続けながら、脚本も辞めたくないとは思っています。
ミチガミ
脚本とか、そういう創作活動を、無理に自分のご飯を食べるための仕事に結びつけるというよりも、どちらかというと別の仕事を持ちながら…?
よっしー
そうですね。
ミチガミ
自分の没頭したいものに向き合えるような生き方ができれば、素敵な人生なんじゃないかな。
ヤマザキ
書くことで食べていきたいっていう思いがあるわけではない?
よっしー
0ではないんですけど。
ヤマザキ
書くことで生計を立てる方法はたくさんありそうだよね。企業のコピーライターになるとか、構成作家としてテレビ局やラジオ局で仕事をするのも一つの手。あるいは、自分自身が作家としてやっていくという選択肢もある。それが小説家なのか、別の形の作家なのかはさておき、どの形でも”もの書き”としての道だと思う。もの書きの世界って本当に幅広くて、難しいよね。
よっしー
そうですね。ずっと昔から、どこかで自分のやっていることに胸を張れない部分があって、常に自信がない状態なんです。
例えば、「自分は脚本づくりに没頭しています」と言ってこの場所に呼んでもらいましたが、「本当の意味で没頭していると言えるのか?」「そもそも、本当の没頭って何だろう?」という問いが頭をよぎるんです。
ヤマザキ
没頭が呪縛を生んでる…(笑)
よっしー
どこかで「俺はこれで生きていくんだ」「こういうことをやりたいんだ」とはっきり言えない自分がいるのかなと思っています。でも、その気持ちを変えるには続けていくしかないのかなとも感じています。今は「何かを書くことで生きていきたい」と自信を持って言えない自分がいるんです。
後編につづく。